>人間ドッグで見つかった肺がん

人間ドッグで肺に影が見つかり、大学病院に行くように言われました。大学病院で検査をしましたが、炎症を起こしている程度で経過観察すると言われ1年間、3カ月ごとに病院に通いました。1年目に影が大きくなり肺がんの疑いで、ペット検査を受ける事になりました。ペット検査とは、糖と放射性を含む液体を体に点滴し、特殊なレントゲンで写真を撮る事です。癌細胞は糖を吸収する性質を持つので、レントゲンで写真を撮ると癌がある部分が放射性を含んだ液体で光ると言うわけです。ペット検査の結果、やはり肺の一部にパチンコ玉くらいの光る腫瘍が映し出され、癌と診断されました。

癌と診断されてから、また検査が始まりました。肺癌は脳に転移しやすいので、脳の特殊MRAを取ったりとさまざまな検査をしました。幸いなことに脳の転移は見つからず、早期発見で最下位ステージではないかという事でした。私の場合、1年前から通院して経過観察していましたが、肺の炎症を起こしている白い影の部分が大きくなったり小さくなったりしたそうなのです。ですから、良くなったかと思っていたのが急に悪再発して悪くなったという感じです。これは癌の種類によって、大きくなったり小さくなったりすることがあるそうで注意しなければならないと言っていました。医師によると、とにかく早く癌切除をした方が良いとの事で2週間後に手術が決まりました。

癌を宣告されて、死神ににらまれているような日々でした。毎日毎日、誰の話にもうわの空でした。家族は、気を使って腫れ物に触る様に扱ってくれました。それでも看護婦さんは、普通に私に接してくれて冗談を言って私を元気づけてくれるので気休めになったと思います。友人からのラインなどのメッセージもうれしかったです。

10日ほどの入院でしたが、大きな大学病院の裏側を見学できたと思います。霊安室があったり、裏階段を通ってみたり、ドクターヘリのヘリポートを見に行ったりできたことは良かったです。ドクターヘリが返ってくる時は、病室の窓を閉めるように病室に放送が入るので、いつもびっくりしました。すぐ上がヘリポートだったのでの爆風が病室に入らないようにするためだったのかもしれません。

退院間近になると、4人部屋では私が古株になっていました。新しく入院してこられる家族など興味深い目でこちらを伺ったり、時には失礼にも病名を聞いてくる方もいらっしゃいました。でもそれは同じ病気の方で何度も転移、手術をされている方のご家族で、とても明るく元気なので驚きました。その姿を見てあきらめてはいけないと元気づけられました。

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内視鏡の手術を行いましたが、手術はとても怖かったです。大学病院で、いくら何百回も手術を行っている先生と言っても、やはり不安でした。全身麻酔でしたが、このまま目がさめなかったらどうしようととても怖かったです。また、肺の一部を切除したと時に声帯に触ってしまったらしく、1か月間、声が出ませんでした。

テレビに出ている声帯をやられたプロレスラーの声の様だと家族に笑われましたが、自分の言っている事が伝わらず困りました。入院中、大学病院の耳鼻咽喉科にも通いましたが、まったく声が出ず、いつ直るかもわからないと医師に言われてしまいとても悲しかったです。声が出ないこと、自分の意志が通じない事がこんなに辛い事と思いませんでした。

スマホで友人と話す時、仕事の電話をする時、何度言い直しても聞き返されて本当に困りました。最初はインフルエンザで声をやられたとごまかしていましたが、そのうち誰ともしゃべりたくなくなって家にこもっていました。幸い1カ月で治ったので良かったですが、1年も治らなかったらどうしていたのだろうとぞっとします。